「仕事が終わる」ビジネスチャットへ kubellが描くBPaaS×AI構想の画像1

ビジネスコミュニケーションツールとして使われてきたChatworkが、「会話」で終わらず、「業務を終わらせるところ」まで支援する。そんな世界は、すでに構想の話ではなく、すぐそこまで来ています。

その実現に向けて動いているのが、ChatworkとBPaaSをAIエージェントで融合させるkubellグループの取り組みです。その狙いと現在地について、株式会社kubell CPOの徳原希望氏に話を聞きました。

ビジネスチャットを「業務が終わる入口」へ

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——kubellでは、BPaaS事業として、業務代行サービス「タクシタ」を運営していますが、次の構想としてどのようなものを考えているのでしょうか?

AIを通じて、BPaaS事業とChatworkを融合し、経営を支援することですね。Chatworkを起点として、AIがユーザーの業務を整理・支援し、「完了」まで繋げていくイメージです。Chatwork上でメッセージを送ることで、AIエージェントが業務の振り分けを提案し、必要に応じて人が入りながら、作業を進行できるように設計しています。

これまで「相談や人同士のコミュニケーションの場」だったビジネスチャットが、「業務が終わる入口」へと役割を変えていく、ということでもあります。

会話が起点になり、業務の完了までつながる

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——今後の機能追加によって、ユーザー側はどのようにChatwork上でAIに指示を出せるようになるのでしょうか?

例えば、通常のトーク画面で「AIファシリテーター」や「AI秘書」と呼ばれるAIに向けてメンションをつけ、会話形式で指示を出すことができます。トークルームの設定によっては、提案型のAIファシリテーターを活用することも可能です。これは、ユーザーとクライアントの会話内容を確認しながら、次に取るべきアクションをAIが先回りして提案してくれる仕組みです。

たとえば、契約の話が進んでいる会話の流れから、「そろそろNDAの締結が必要ではないか」と判断し、あらかじめ学習させているNDAの雛形をチャット画面上に提示する。その後の修正ポイントのチェックや、法務への受け渡しといったプロセスまで含めて、業務を進めていくことができる体験を設計しています。

一方で、クライアントも参加するトークルームとは別に、画面の右下には、ユーザー本人だけが利用できる「AI秘書」のサイドパネルがあります。こちらでは、契約の進め方の相談や取引先の簡易的な調査など、他者に見せずに整理しておきたい内容をAIに指示したり、壁打ちのように相談したりすることが可能です。

ひとつの画面の中に、AIのアウトプットを共有しながら業務を前に進める「オープンなコミュニケーションの場」と、個人だけが使える「クローズドなAIアシスタント」を併せ持たせることで、会話と業務を切り分けることなく、シームレスに仕事を進められるUIを目指しています。

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——Chatwork上で指示を受けたのち、具体的にはどのようにAIが業務を行う構想なのですか?

まず、ユーザーが自然言語で依頼した案件の内容をAIが整理・分解します。そのうえで、タスクごとに最適なリソースを割り当てていきますが、そのリソースはAIに限りません。タクシタのオペレーションスタッフなど、人による確認や対応が必要な部分には人が関与します。

業務の振り分けはAIが行い、遂行はAIと人が分担する。一方で、ユーザー側からはその裏側の動きは見えません。Chatwork上で依頼をすれば、アウトプットが返ってくる。そんな業務体験を提供します。

ユーザーの体験としては、「依頼の仕方」や「画面」を大きく変えることなく、結果だけが返ってくる。その変化を目指しています。


——このような仕組みにしようと考えた理由を教えてください。

私たちの提供するChatworkを活用してくれている企業の多くは中小企業です。限られた人員で業務を担う体制では、複数のSaaSやAIツールを使いこなすことに煩雑さを感じる場面が多く存在します。

そこで、365日使い続けているChatworkを活用し、私たちがAIを使ってさまざまなサービスのハブとして機能すれば、企業側は“SaaSやAIツールの使いこなし”を意識することなく、必要な業務を進められるのではないかと考えました。

意思決定者は、チャットでアシスタントや秘書に業務を依頼することに慣れています。この体験を活かし、AIを強く意識することなく、複雑な業務をシームレスに依頼できる設計を心がけています。

SaaSやAIツールを増やして業務を分散させるのではなく、業務を一度、Chatworkに集約することで利用者の体験がシンプルになるという発想です。

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——それでは、今回の事業が他社と大きく差別化されるポイントはどこでしょうか?

大きく2つあります。結論から言うと、「需要が高い業務を起点に設計していること」と「業務が終わるところまで責任を持つこと」です。

まず1つ目は、需要起点で“成果が出る業務”から設計している点です。

kubellでは、タクシタを通じて、経理・採用・給与計算・労務手続き・クリエイティブなど、さまざまな領域で業務の支援をしてきました。その現場経験から、どの業務に継続的なニーズがあり、どこで判断が詰まりやすいのかを把握しています。

そのため、汎用的なAI機能を先に用意するのではなく、需要が高く、成果につながりやすい業務領域から、業務フローや提供体制ごとに設計しています。「何でもできます」と広げるのではなく、まずは確実に価値が出る領域で“強い型”をつくり、そこから横展開していく考え方です。

2つ目は、「ツールの提供」で終わらせず、「業務が完了するところ」までを責任範囲としている点です。

多くの業務支援は、SaaSやAIをつなぐところまでで止まりがちですが、それでは最終的な判断や例外対応が現場に残ってしまいます。私たちは、最初から「誰が・何を・どこまでやれば終わりなのか」を定義し、業務の完了までを前提に設計しています。

加えて、こうした「業務の完了まで責任を持つ」設計を支えているのが、技術と体制の考え方です。

私たちは、AIにすべてを任せる前提では設計していません。AIは、要約や分類、次に取るべきアクションの整理など、非決定論的なアプローチが得意な領域で最大限に活用します。一方で、制約・権限などを誰が承認するのか、どこまでが権限なのか、どの状態で完了とするのかといった決定論的なアプローチが適している領域はルールベースで対応しています。

さらに、重要な判断や例外処理には必ず人が関与する「Human-in-the-Loop」を標準仕様として組み込んでいます。これは、AIの誤りやハルシネーションによる“業務事故”を起こさないためです。モデルの性能や進化に依存しすぎず、まず安全に価値提供を始め、段階的にAIのカバー範囲を広げていける設計にしています。

体制面でも、業務の難易度やリスクに応じて、人とAIの役割を柔軟に切り替えられるようにしています。高難度・高リスクな業務では人が中心となり、標準化された業務はAIを軸に高速に処理をする。完全自動化が適さない領域も含め、「業務の完了に向けて最適な組み合わせ」を最初から選べることが、対応スコープの広さと再現性につながっています。

BPaaSの人とAIの組み合わせ例
A:人が中心(高難度・高リスク・例外が多い)
B:人×AIツール(生産性最大化)
C:AI中心+人がガードレール(標準化された業務を高速処理)
D:ほぼ自動(低リスク・定型・大量処理)

私たちは”完了責任”を起点に、技術と体制を一体で設計しています。「AIだけ」でも「人だけ」でもない、両者を組み合わせたアプローチが差別化のポイントだと考えています。

AIと人が役割を分かち合う経営基盤へ

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——実際に、どの程度の工数削減ができると考えていますか?

人による確認が必要な業務も多いため、現時点では30〜50%ほどの工数削減になると見ています。

——AI活用で業務が効率化される一方、「人が必要なくなるのではないか」という懸念を持つ方も多いと思います。

私たちは、AIの活用で工数が削減されたからといって、人を減らす方向に進むとは考えていません。戦略設計、営業や企画、クリエイティブなど、人が担った方が価値を生みやすい領域は確実に存在します。

AIによって生まれた時間を、そうした仕事に使えるようにする。その積み重ねの先に、私たちkubellが掲げている「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションがあると考えています。

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——今後、検討しているアップデート予定などがあれば教えてください。

現在は、AIによる業務支援の一部機能を社内で試しながら検証している段階ですが、今後は、より多くの中小企業にとって使いやすい形で提供できるよう、段階的に広げていきたいと考えています。

中小企業の業務は一様ではなく、領域によって「一部だけ任せたい」のか、「最初から最後まで任せたい」のか、そのニーズは大きく異なります。これまでのBPaaSの知見を活かしながら、どこまでを支援するのが最適なのかを見極めつつ、必要なアップデートを重ねていく予定です。

 

——最後に、今後の展望を聞かせてください。

今後は、AI同士が連携してアウトプットを行うような世界も視野に入れていきたいと考えています。一方で、すべてをAIに任せるのではなく、重要な判断やチェックには必ず人が関与する、「Human-in-the-Loop」の考え方を大切にしていきます。

単にAIのアウトプットを確認するだけでなく、AIが差分や異常を検知し、人が見るべきポイントを提示する。そうした形で、人とAIが協働する関係をプロダクトを通して設計していきたいですね。

また、Chatworkは、これまでつながりのなかった相手とも比較的スムーズにやりとりを始められるという特徴があります。この“つながりやすさ”を活かし、仕事やリソースを柔軟につなげられる基盤へと進化させていく構想も描いています。

人口減少が進むなかで、中小企業がすべての機能を社内だけで抱え続けることは、ますます難しくなっていきます。だからこそ、AIと人、そして社外のリソースを前提に、コーポレート機能を補完するという考え方が、これからの経営には欠かせません。

AIと人の役割を最適に設計することで、人が本来向き合うべき仕事に集中できる環境をつくる。Chatwork×BPaaS×AIの進化は、そのための経営基盤を、少しずつ現実のものにしていく取り組みだと考えています。

Chatwork×BPaaS×AIの融合によって変わるのは、単なる業務フローではありません。
中小企業が「どうやって回すか」ではなく、「何に集中するか」を考えられる時間そのものです。

AIばかりが業務を代行するのではなく、AIと人が役割を分かち合いながら、企業の経営に欠かせない業務を支えていく。kubellが描くAIを活用したChatwork×BPaaS×AIの構想は、単なる業務効率化ではなく、企業が「本来やりたい仕事」に集中できる状態を当たり前にするための、新たな基盤になろうとしています。