
一過性の観光客を呼び込む従来型の地方誘致モデルが限界を迎える中、地方都市と都市部企業を「事業パートナー」として結びつける新しい試みが動き出している。
観光庁が推し進める「企業版第2のふるさとづくりモデル実証事業」において、香川県琴平町を舞台としたパソナ地方創生の提案が採択された。同社は7月1日より、歴史ある観光地・琴平町と域外の都市部企業とを繋ぎ、継続的な関係性を構築する実証事業を開始している。
単なる「観光客誘致」や一望的な「CSR活動」にとどまらず、企業の新規事業開発や人材育成ニーズを地域の切実な課題と直結させるこのアプローチは、双方に持続可能なメリットをもたらす次世代の「関係人口」構築モデルとして注目を集めている。
「一望の一泊」を超えた関係性をつくる――地域課題と都市部企業のニーズを直結
金刀比羅宮の門前町として栄え、年間多くの参拝客が集まる香川県琴平町。しかし、多くの観光地と同様に、観光客の「通過型」化や、地域事業者の高齢化・人手不足、町内の回遊性低下、空き店舗の増加といった構造的な課題を抱えている。
これに対し、今回パソナ地方創生が提示するモデルは、課題解決の手法として「都市部企業の共創」を組み込む点に最大の特徴がある。
本事業では、地域事業者が抱えるリアルな課題と、都市部企業が持つ「新領域への事業拡大」「現場起点の実践型人材育成(越境学習)」「従業員のエンゲージメント向上(ワーケーション)」といった経営ニーズを合致させる構造をつくり出す。
具体的には、単に課題を提示して終わりではなく、都市部企業側の社内決裁に向けた資料作成支援や、初回実証案の策定支援までを包括的にサポートする。さらに、プログラムを通じて「年間3回以上の現地訪問」を構造的に組み込むことで、単年で途切れることのない継続的な連携体制の構築を目指している。
大阪で「困りごと公開会議」開催――本音の課題からビジネスを育む
事業のファーストステップとして、8月5日(水)に大阪・京橋のオープンイノベーション拠点「QUINTBRIDGE(クイントブリッジ)」にて、「企業×地域 共創セッション in 大阪 vol.2 ~香川県琴平町の困りごと公開会議~」が開催される。
イベントの第1部では、琴平町の老舗事業者や関係者が登壇し、地域が抱える「本音の課題」を提示するトークセッションが予定されている。テーマは以下の通り多岐にわたる。
- 町内回遊性・二次交通の課題
- 中心部の空き店舗・歴史的建造物の利活用
- 地場商品の販路拡大・ブランディング
- 宿泊・飲食業における慢性的な人材不足
観光地の上辺の魅力ではなく、地域が直面する泥臭い課題をあえてオープンにし、新規事業担当者や人事・研修担当者とのダイレクトなディスカッションを通じて具体的な共創の芽を育む狙いだ。
キーパーソンとなる「地域コーディネーター」の育成
本事業のもう一つの柱が、企業と地域を結ぶ「地域コーディネーター」の育成支援である。
企業側が求める成果(事業検証や人材育成効果)と、地域側の課題(持続可能な経済循環)を理解し、両者の橋渡しができる人材の存在は、こうしたプロジェクトの成否を分ける。パソナ地方創生では勉強会等を通じてこの仲介機能を強化し、参加企業・地域双方の満足度を高めるプラットフォームを構築していく構えだ。
地方創生をめぐる議論は、「観光客の奪い合い」から「関わり合いの質」へと移行しつつある。都市部のビジネスリソースを地方の課題解決へとなだらかに接続する今回の取り組みは、縮小社会における新しい地域再生のモデルケースとなるか。琴平町で始まる実証事業の成果に注目が集まる。









