BPaaSで顧客対応・カスタマーサービスの品質・効率向上…主要サービス4選と導入成功のポイント
「Unsplash」より

●この記事のポイント
・カスタマーサービスの効率的な運用とコスト管理が課題、BPaaSの活用が注目
・問い合わせ対応、クレーム処理、チャットサポート、ヘルプデスク運営、顧客データ管理などをカバー
・主要な顧客対応向けBPaaSサービス4選

 現代の企業経営において、顧客満足度は競争力の要となっている。カスタマーサービスは顧客との重要な接点でありながら、効率的な運用とコスト管理が課題だ。こうした背景から注目されているのが「BPaaS(Business Process as a Service)」である。クラウド技術とアウトソーシングを融合し、AIや専門スタッフの支援を活用して、迅速かつ高品質な顧客対応を実現するサービスだ。本記事では、顧客対応業務向けBPaaSの概要とメリット、代表的なサービスを紹介する。

  BPaaSはクラウドベースで業務プロセスを提供し、SaaSとBPOを組み合わせたサービスモデルだ。顧客対応では問い合わせ対応、クレーム処理、チャットサポート、ヘルプデスク運営、顧客データ管理などをカバーする。さらには、AIチャットボットによる自動応答や専門スタッフによる複雑案件対応を組み合わせ、質と効率の両立を図る。

【主な特徴】
・クラウド運用によるスケーラビリティ:リアルタイムデータ管理とリモートワーク対応
・AIと自動化の活用:定型問い合わせの自動処理で人的対応を最適化
・専門家によるサポート:高品質な対応を保証しエスカレーションにも対応
・柔軟な料金体系:初期投資を抑えつつ業務量に応じた課金

 世界市場では2022年から2032年にかけて大幅な成長が見込まれ、国内企業でも導入が加速している。

主要な顧客対応向けBPaaSサービス4選

 ここからは、国内で普及している主要な顧客対応向けBPaaSサービスを紹介する。

1. Salesforce
 セールスフォース・ドットコムが提供するクラウド型CRMプラットフォーム。営業、マーケティング、カスタマーサービスを一元管理し、AI(Einstein)を活用した自動化やデータ分析で業務効率化を実現する。マルチチャネル対応や高いカスタマイズ性で、中小企業からグローバル企業まで幅広く利用可能。

2. Zendesk
 チケット管理、AIチャットボット、マルチチャネル(メール、チャット、電話、SNS)で顧客対応を効率化するサービス。AIによる自動応答や分析ダッシュボードにも対応。中小企業から大企業まで対応し、低コストで導入可能な点も人気。

3. ServiceNow
 ITサービス管理(ITSM)や顧客対応を効率化し、AI駆動のワークフローで問い合わせの自動化やケース管理も支援。セルフサービスポータルや外部システム(CRM、ERP)との統合が特徴。マルチチャネル対応で顧客体験を向上させ、中堅・大企業向けのBPaaSとしてDXを推進する。

4. ビジュアルIVR
 NTTコムが提供するクラウド型サービス。顧客はスマートフォンやPCでメニューをタップし、FAQやチャットボットで自己解決可能となる。データベース連携に強く、高速メール配信や顧客管理を効率化。顧客体験向上とコールセンター負荷軽減を実現させている。

導入成功のポイントと今後の展望

 導入時は自社業務との適合性確認、厳格なセキュリティチェック、充実したサポート体制の確認が不可欠となる。また、料金体系の透明性も重要な判断材料だ。今後は生成AIや自然言語処理の進化で自動化・パーソナライズの精度向上が加速すると考えられるため、労働力不足が深刻化する国内市場において、BPaaSは競争力維持のカギとなるだろう。さらには、法改正やテレワーク普及によるニーズ拡大も追い風だ。

 顧客対応業務向けBPaaSは、AIとクラウド技術、専門スタッフの知見を活用し、効率的かつ高品質なカスタマーサービスを実現する。多様なサービスを適切に選ぶことで、企業は顧客満足度向上とコスト削減を無理なく両立できるだろう。DX時代の顧客対応の未来を切り開く重要なツールとして、今後も顧客対応業務向けBPaaSの普及が期待される。

(文=齋藤めぐみ/有限会社リーゼント、ライター)