
日系テック企業が東南アジアのEC支援モデルに本格的なAI実装を進めている。その先頭に立つのが、東証グロース上場のAnyMind Group(証券コード:5027)傘下でマレーシアを拠点とするEC支援会社、Arche Digitalだ。
Arche Digitalは2026年4月、マレーシアで開催された「Internet Alliance(IA)Tech Industry Awards 2026」の「Digital Intelligence: Artificial Intelligence(AI)」部門においてSilverを受賞した。同アワードはマレーシアSME協会、マレーシアデジタル協会(MDA)、マレーシアESG協会の代表者らが審査にあたる、同国を代表するテクノロジーアワードの一つである。受賞理由は、AIを活用したEC支援により、企業の売上成長と業務効率化に貢献してきた点が評価されたものだ。
Arche Digitalが提供するのは、ブランド企業向けのEC支援のフルスタックサービスだ。戦略策定から倉庫・物流管理、ストア運営、マーケティング、カスタマーサービスまでをワンストップで担う。なかでも特徴的なのが、AIによるブランドとクリエイターの自動マッチングと、ライブコマースへのデータ活用だ。従来は担当者の経験や勘に頼りがちだったインフルエンサー選定を自動化し、売上データをリアルタイムで分析して施策の精度を高める。これにより、企業は施策の実行スピードを向上させ、より短期間での成果創出が可能になるという。
同社はマレーシアにおいて2015年の創業以来、グローバルスキンケアブランドをはじめ多数のフラッグシップストア立ち上げを支援し、累計注文総数は100万件を超えている。
こうした取り組みが意義を持つのは、マレーシアを含む東南アジアのEC市場が急拡大しているからだ。マレーシアのEC市場規模は2024年に約107億米ドルと推定され、2029年には約209億ドルへ倍増する見込みだ。東南アジア全体では2025年に3,300億米ドルへ成長するとの予測があり、年間成長率は15%以上とグローバル平均を上回る。TikTok Shopに代表されるエンターテインメント型ショッピングが若年層を中心に浸透しており、特にインドネシア、タイ、ベトナムでは主要ECプラットフォームとして急伸している。こうした市場環境の変化が、Arche DigitalのようなAI活用型EC支援事業者の存在価値を高めている。
親会社のAnyMind Groupも追い風を受けている。2025年度の業績は売上高・売上総利益・各利益指標ともに通期予想を上回り、売上総利益は前年比17%増を達成。法人ブランド支援事業は前年比31%の高成長を維持した。2026年度は売上収益791億円(前年比38%増)、営業利益30億円を見込んでおり、利益成長の加速を目指している。
東南アジアが同グループの売上収益の約半分を占め、マレーシアはその中核市場の一つに位置づけられる。Arche Digital CEOのSteven Tanは受賞コメントで、「GMV(流通取引総額)の拡大を牽引するとともに、厳選されたクリエイターネットワークを通じてブランドの成長を支援する」と述べ、マレーシアEC市場でのリーダーシップをさらに強固なものにしていく方針を示した。
AIによる自動化とデータ活用をEC支援に組み込む動きは今後、東南アジア全域に広がっていく可能性が高い。マレーシアはデジタルインフラと金融システムが整備された比較的成熟したEC市場であり、都市部ではオンラインショッピングはすでに日常の一部となっている。EC先進国マレーシアでの実績は、他の東南アジア諸国への展開における試金石ともなり得る。
日系テック企業が現地に深く根を張り、AIを武器に東南アジアのブランド企業を支援するモデルは、単なる海外展開にとどまらない。競争が激化するEC市場において「人手に依存しない高度な運用」という差別化軸を確立しつつあり、その動向は日本企業の東南アジア戦略を考えるうえでも注目に値する。




